現役人事部長の「採用研究室」

人事部長の「採用研究室」

採用面接に社員研修、査定評価まで…人事部という職場で日々思うことを書きます。企業の人事担当者、学校の就職支援課、就活する学生さんの参考になれば幸いです

仕組まれたマナー研修

先日、同業の人事部長の紹介で、社員研修を請け負う会社の営業マンと話を聞きました。

 

話の中で特におもしろかったのが、新入社員向けのマナー研修について。

メニューとしては、名刺の渡し方や電話応対、メールの作法など、オーソドックスな内容でしたが、営業マンによるウリは、

「必ず“事故”が起こるんです」

とのこと。

 

例えば、上司と同伴して得意先に挨拶に行くというシチュエーション。

応接室で名刺交換を済ませたところで、上司役のスマホに電話がかかってきて席を立ってしまいます。その間、初対面のクライアントと雑談をしなくてはいけない状況に……。

とか、

自席に外線電話がかかってきて、上司に取り次ぐ予定だったのが、上司役は他の電話で長話中。自分がそのままクレーム対応をしなくてはいけない……。

といった、予定にはなかった“事故”が起きた状態でアドリブ対応を試されるというのです。

その前の講義では、定型の所作や言葉を習い、そのとおりにすればOKと思っていた新入社員は、大体固まるそうです。

こういったアクシデントを体感することで、「現場は常に変わる」ということを学ぶのはもちろん、新入社員が互いの反応をみることで、大いに盛り上がり、打ち解けるそうです。

 

ちなみに、新入社員にマナー研修でいちばん苦戦したことを聞くと、ほとんどが「電話応対」で、「メール作法」は概ね慣れているそうです。

 

リモート研修となると、同じようにするのは難しいかもしれませんが、うちの会社も来年4月の新入社員研修では、何かしらの“事故”を起こそうかなと考えています。

インターンの上手な生かし方

昨年から、夏休み頃から始まる下記企業のインターンシップがリモート形式になって、正直楽しくなくなったという声を聞きます。

一方で、地方から参加してもコストがかからないことや、複数のインターンに参加しやすくなったからありがたいという学生もいます。

 

人事部としての本音は?

昨年の時点では「生で会わないと学生の素の部分が見えないし、学生にとっても会社の雰囲気が感じられないのでは」

なんて心配していましたが、2年目になると、あんまり関係ないのかな? と思っています。

ただ、インターンに参加するハードルが下がった分、参加したにもかかわらずエントリーしない率が上がりました。

と、これは採用する側からの感想です。

 

インターンであらゆる業界を体験》

私が学生に戻って就活をするなら、今のリモートインターンは大歓迎です。

志望業界が決まっていない人はもちろん、すでに決まっていたとしても、他業界のインターンに参加するメリットは大きいです。

例えばメーカー志望だったとして、広告業界や金融業界のインターンを受けるとします。

そのインターンの中で、

「広告代理店は、クライアントのニーズを先回りして提案できる人が優秀と言われるんだ」

とか、

「銀行は、論理的な説明やプレゼンをできるリーダー型の人を求めているんだ」

といった自分なりの感想を持っておけば、志望業界(メーカー)の面接に臨んだ際に、

「自分自身がどんなことに興味があるのか知るために、広告代理店や金融のインターンに参加しました。それぞれ刺激を受ける経験をしましたが、あたらめて、自分はモノ作りを一生の仕事にしたいと気づきました。ただ、広告代理店の、ユーザーの潜在的なニーズを言葉に落とし込む技術は、大いに勉強になりました」

などといった応用ができるかもしれません。

(かなりあざといですが)

 

レポートやアルバイトを疎かにしてまで大量のインターンに申し込む必要はないですが、せっかく体験したら、

インターン中、どんな行動や考えを持った参加者が評価されていたか

・この会社、業界が求める人材を一言で言うと

・参加者の中で、自分の客観的な評価順位はどれくらいか(その理由も)

あたりを文字に残しておくと、分析力を鍛えるのにとても役立ちますよ。

 

4月に入社した新入社員は今

4月1日に入社した新入社員は、2カ月間の研修を経て6月1日に各部署に配属されました。

新型コロナウイルスが蔓延する前は、本格的に仕事を始めて3カ月になる今の時期、人事部のメンバーがフォローを兼ねた飲み会をおこなっていました。

もちろん今年は、そんなことはできませんので、個別でヒアリングをおこなっています。

 

《かわいがられる人、孤立する人》

3カ月しか働いていないわけですので、実際はほとんど戦力になっていません。それでも少しづつ「与えられる仕事」の差は出てきているようです。

得をするのは、やっぱりかわいがられる人。

雑用も楽しそうに請け負い、新規企画の宿題を上長から出されたら、上長の期待よりも少し多く出してくる。などなど……

一つ一つは小さいながら、先輩たちから「伸びそうだな」と思われる要素が積み重なって、ようやく面白い仕事(担当)を任されるのだと、どの部署を見ても感じます。

一方で、頭の回転も良く、自分の損得を敏感に意識する人は、最初こそ評価されますが、たった3カ月でも「浮いている」感が出てきてしまいます。

例えば、「今私の指導をしてくれている先輩よりも、隣の班の先輩の方が仕事できるので、替わってもらいたい」

などと密かに言っている新入社員が毎年少数いますが、大体バレています。

 

だからといって、最初の3カ月の評価がずっと続くわけではありません。むしろ無意識で好かれる人よりも、悩んで頭で考えて、

「どういう人や行動が好かれるのか?」

と論理的に分析する人の方が、後々リーダーになって人を育てられていることが多いです。

つまり、まだ正解は出ないという感じです。

 

中学生から仕事研究の申し込み

毎年、課外授業の一環として、中学生から「職場見学」の申し込みがあります。

こうして子供たちから自社が注目されることはありがたいので、人事部が受け付けています。

 

今週、新型コロナが拡がって以来初の申し込みがありました。時節柄、ZOOMによるリモートで現場の社員にインタビューしたい、という内容です。

直接会社の中を歩いて、仕事場の雰囲気を感じてもらえないのは残念ですが、しょうがないですね。

 

事前にインタビュー内容を送ってくれたのですが、その中に

「お給料はいくらくらいですか?」

「休みはどれくらい取れるのですか」

というものが……。

大学生向けの企業説明会でも、なかなか勇気ある質問ですが、中学生はストレートです。

 

入社2年目の鬼門

コロナ禍の中、新入社員のフォローアップは丁寧におこなってきたつもりでしたが、忙しさにかまけて、大事なことが漏れていました。

入社2年目のサポートです。

 

《小さな差が年々大きく広がる》

コロナに関係なく、2年目ともなるとそれぞれの部署内の評判も差が出てきます。

ただ、リモートワークが根付いてきたことで、若い社員への指導が最低限になり、特に入社2年目社員の仕事のやり方が「自己流」になってしまいました。

社内の事務スタッフから、

「〇〇くん、あの電話の対応はないよ」

「〇〇さん、2年目になっても言われた事しかやらないよ」

という意見が人事部に聞こえてきます。

一方で、希望しない部署に配属されたにもかかわらず、自分が担当する仕事の本質的な意味を理解して、動いている2年目社員もいます。

もちろんそういう人は部内の評判もよく、早くも新入社員の面倒までみています。

この差はまだ小さいですが、仕事の本質を理解しているかいないかの違いは土台であり、差はどんどん広がります。

7年目あたりで最初の昇進があるのですが、ここではっきり目に見えることになります。

 

2年目社員については、個々の性格にあわせたアドバイス(もしくははっきりと注意)をするつもりですが、ときにはお酒が入ったほうが受け入れてもらいやすいケースもあるので、難しいところです……。