現役人事部長の「採用研究室」

人事部長の「採用研究室」

採用面接に社員研修、査定評価まで…人事部という職場で日々思うことを書きます。企業の人事担当者、学校の就職支援課、就活する学生さんの参考になれば幸いです

秋〜年始の合同説明会

2023年新卒採用説明会の準備が始まっています。

先週は、合同説明会の主催会社からスケジュールの提案をいただきました。

主催会社によれば、ZOOMを使ったオンラインと、東京ビッグサイトなどの大会場を使ったリアルの両面で計画しているそうですが、12月以降は、リアル説明会を希望する企業がものすごく多いようです。

オンライン説明会のコツも掴め、慣れてきたものの、やっぱり顔や反応を見ながら話す方がいいですからね。

 

ところで、他社の会社説明を聞いて思うのですが、会場で聞く分には、初めて聞く話が多く、40分くらいあっという間に感じる一方で、オンラインになると、20分が限界で、それ以上になると飽きて別の作業をしてしまいたくなります。

就活生もオンライン授業を経験して、長時間話を聞き続ける行為に飽きやすくなっていると想定。リアルイベントだったとしても、以前より短い構成にすることにしました。

 

この春から、採用チームに新メンバーが入り、企画会議でも今までにないアイデアが生まれています。採用サイトの内容など、決定したところでまた書きたいと思います。

エントリー作文の傾向

エントリーする際に、私の会社では作文を提出することになっています。

これは業界にもよるのでしょうが、作文は基礎能力がシンプルにわかりやすい手段と考えていますので続けています。

 

《恋愛と受験》

とはいえ、私の場合、内容についてはそれほど重視していません。

・相手に伝える文章になっているか

・お題からズレていないか

・規定の文字数に対して、9割程度書いているか(800字の規定に対して600字しかかいていなかったり、800字を超えている人が、たまにいるんです)

・度を越した汚い字ではないか

程度で、ひとまずボーダーラインを引きます。

あとは、エントリーシート自体で選考しています。

ただし、作文をA〜Dで評価し、記録には残しています。その後の面接時に利用することもありますし、最終的に内定を出すかどうか、迷った場合はもう一度作文やエントリーシートを読み込んで検討しますので、内容は良いに越したことはありません。

そういった基準で見ている作文ですが、年々増えているのが、「今までもっとも頑張ったこと」や「挫折」のようなテーマにすると、恋愛と受験について書いてくる人です。

いや、もちろんいいんです。

恋愛でドラマチックな経験をしたのでしょうし、本気で勉強して難関校に合格したことは血肉となっているのでしょう。読んでみると、自虐から始まって意外なオチになる名文に出くわすこともあります。

ただ……

多くの恋愛&受験エピソードは、

「大学生活4年間、あんまりチャレンジ経験をしなかったんじゃないの?」

と疑わせるものだったりします。

つまり、行動的ではないと想像させるリスクがあります。この手の話は。

部活動やアルバイト、ゼミの話だって、ありきたりな話といえばありきたりですが、少なくとも自社に就職した場合に「生かせそうな」一面を測ることができます。

採用選考は、はっきり言えば

「その人の全てを見ることはできないけど、断片的に過去の行動(判断)を聞いて、将来、仕事場で応用ができそうな人を予測する」

博打です。

面接で披露できるカードは限られているので、選考する人事が「仕事でも応用できそう」と感じやすいエピソードを書いた方が、勝率は上がるのではないでしょうか。

(ちょっと考え方が古いのかな……)

 

2023年入社の採用説明会で

他社の人事部長との反省会で出た話です。

来春の内定者か決まってホッとする間もなく、2023年入社のweb採用説明会がボチボチ始まっています。

私の会社も含めてすでに、webによる合同セミナーを何度か実施しているのですが、

「残業を気にする学生が増えた」

という感想で共通しました。

一通り説明が終わった後で、フリーの質問会(または質問をチャットで送ってもらう)になると、基本的には

「仕事の流れがよくわかりました」

「やりがいがある仕事と感じました」

など、模範解答的な感想から話し出しますが、

「業界的に忙しいと聞きますが、土日や深夜まで残業はありますか?」

と質問する人がほぼ毎回います。

ちょっと前なら、そんなことを聞いたら名前をチェックされて、選考で不利になるんじゃ? なんて心配する人が大半でしたが、最近は説明会の段階でそんなチェックはしていないことを理解しているようです。

webはぶっちゃけやすいのかもしれません。

過重労働に関するニュースは多くなりましたので、気になるのは当然だと思います。

残業はもちろん20年前から比べたら激減しました。ただ、こんな時代ですので採用説明会で質問に答える社員には、

「昔は深夜までがむしゃらに働いたもんだ」

なんて苦労自慢だけは絶対にしないでください! と念押ししています。

特に40代でバリバリ働いている優秀層は、忙しい中で腕を磨いてきた自負がありますから、口を滑らせそうでヒヤヒヤです。

 

人事部は、8月になるとインターンの準備やら、採用サイトの構成打ち合わせと、少しずつ採用モードになってきます。

今のうちにまとまった夏季休暇を取るべく、部のメンバーで絶賛調整中。

新入社員も、入社して初の連休となる5日間の夏季休暇。どんな形でリフレッシュしてくれるのか楽しみです。

 

人事部長の採用反省会

先日、ようやく内定を出しました。

内定を伝えたあと、水面下でいろいろ駆け引きがありましたが、ひとまず全員が辞退せずに入社予定とのこと。

内定者が確定した日の夜は例年、人事部メンバーで打ち上げビールパーティをするのですが、今年はもちろん新型コロナでNG。スッキリしできません……。

 

〈人事部長は「内定を出してから」が緊張〉

私の会社の同業他社も、大方が内定を出したようです。

「人事部長の採用反省会」と称して、7月から8月あたりに集まるのが恒例です。今年は人数を絞って、アルコール抜きで細々と開催。

そこで必ず話題になるのが、辞退エピソードです。多くの会社では、人事部長か採用チームのリーダーが内定者に電話で伝えるケースが多いですが、この電話は、おそらく受験者並みに緊張しています。

それは、内定を伝えた直後に辞退を言い出したり、他社の話をし出す人が多いからです。

 

ある会社でも今年辞退者が出たのですが、ちょっと珍しい嘘をつかれてひどいめにあったそうです。

通常、内定を出した瞬間に、

「じつは他社の最終面接が○日にあるので、待ってもらえませんか」

と言い出すことは、人事にとっては想定内ですし、今さら怒ることも慌てることもありません。

しかし、その辞退者は

「必ず御社に行きます。受験中の他社はすべて辞退しました」

と言っていたにもかかわらず、数日後にまさかの辞退連絡をしてきたそうです。

もう内定も出ているし、そんな嘘つかなくても……という気持ちになりますが、おそらくその内定者にとっては、「本当のことを言って取り消されたらどうしよう」という必死の演技だったのでしょう。

 

あ。もちろんこの反省会では、受験者の個人情報や特定されるようなエピソードは、お互い話しません。

就活中の皆さんはご安心ください。

新しい経験を皆で共有して、いざというときの対応策を勉強し合うための集まりですし、本質的にはライバル同士ですので。

 

指導社員とうまくいっていない場合

新入社員が本配属になってから、しばらく経ちました。例年ここで、人事部は15分程度の軽いヒアリングをおこなっています。

 

今年もさっそくヒアリングしましたが、一人一人反応が違っておもしろいものです。

「上長や先輩から毎日怒られているが、どれももっともな話なので勉強になっている」

「先輩たちは皆さん、少し聞いただけでも丁寧に教えてくれて、温かい環境」

「自由に意見させてくれるのでありがたい」

などなど。毎日怒られるといっても、愛のあるダメ出しと受け止めているのであれば、ひとまず様子を見て、と考えています。

そんな中で一人、モチベーションが下がり気味の発言をする新入社員がいました。

「指導してくれる先輩自身が仕事のことで悩んでいるようで、私にまで異動したいようなことを言ってきます。一方で、別件で他の先輩に作業のやり方で相談する機会があったのですが、わかりやすいだけでなく、その仕事の意味や先の展望についても語ってくれる人で、正直、こういう人の下で仕事をしてみたいと思ってしまいました」

と言います。

人事にこう言った話をする点は、まだ新入社員だなと感じますが……。

それにしても、初期段階でこういった悩み(不満)を感じさせるのはまずいです。

指導社員にはどう話すか、もしくはもう少し見守るか。

新型コロナでちょっと飲みに行ってそれとなく話すようなことが難しく、人事としては悩みどころです。

 

じつはその指導社員とは、以前いた部署で一緒に働いた経験もあり、時々飲みにいく仲でもあったので、ひとまずメールを送りました。

内容は、

「指導社員になったそうで、うまく面倒みてあげてください」

「私も経験しましたが、ぶつかったり悩んだりする経験は貴重なので、逃げずに向き合えば必ず財産になります」

といったもので、先ほどの新入社員からの話については伝えませんでした。

 

その後返信があり、

「まさに悩んでいるところですが、前向きに頑張ります」

とのこと。

これで解決するわけではないでしょうが、新入社員のほうも、優れた先輩でないからといって、同じ人間になるわけではなく。

むしろ、いろいろなタイプの先輩を観察して、自分に合った部分をいいとこ取りしていくのが、優秀な社員の成長過程です。

 

とはいえ、リモートワークが増えている今、新入社員に限らず、若手のメンタル面の観察は本当に重要です。

(だから人事部はリモートワークがほとんどできないのですが)