深夜のメールもハラスメント!
人事部としては何とも難しい問題です。
若い社員から、
「部長から土日、深夜問わずメールが届くことに悩まされています」
という声が2件続きました。
詳しく聞くと、一つのケースAでは緊急の内容でなく、部長が思いついたことを忘れないうちにメールで送っておく(返事を求めていない)だけのようです。
それでも部下によっては、何かあったのではないか? と不安になりますし、ストレスを与えます。
もう一つのケースBは、その部長はマネージャー兼エースプレイヤーとして、部署の成果の半分以上を担っているという環境でした。加えて小さな子供もいるママさんです。
そのため、子供の世話が片付いた深夜や、土日にクライアントの対応を自ら処理し、新たな指示や情報共有を、部下にメールで伝えていました。
部長は常に忙しくしており、部員は、部長に共感してバリバリ働く中堅メンバーと、振り回されて疲弊した(と感じる)若手メンバーに分断されていました。
ケースAは、その部長に
「気持ちはわかりますが、部下にもプライベートの時間がありますから、緊急でなければ自分自身に備忘メールを送るなどして、翌朝か週明けにあらためて部下に指示してください」
と伝え、ひとまず対応できました。
難しいのがBパターンです。
部長も限られた時間の中で仕事しています。
とはいえ、部下にも部下の世界がありますし、どちらの主張ももっともです。
ただ、この対立の根底には、部長や中堅エースたちの本心に
「自分はこんなに仕事しているのに、成果も小さく仕事量も少ない若手が不満を言える立場なの?」
といった気持ちがあり、若手側には言葉にしなくても十分伝わります。
若手側は、
「上の人たちの苦労自慢をされても困る。部下に同じことを要求しないでほしい」
と、反発心を抱いてしまいます。
このような拗れた状態の時に、人事部ができることは、感情の通訳をして
「異動させてやる」「評価を下げる」
「会社辞めてやる」「どこかに訴える!」
と言い出すことを抑えます(応急処置)。
その後、お互いが絶対に譲れないラインを双方から聞いて(診察)、
落とし所を見つけていきます。
ここで気をつけるのが、会社(人事部)が介入して変えたという体裁でなく、部長の指揮のもと、自然に修正されたように心がけます。
例えば、
「部下の不満を認めて、会社が部長に改善させた」
としてしまうと、部長は面子を潰されたと感じて、問題を訴えた部下に恨みを持つかもしれません。
逆に部下からすれば、もう部長への信頼は戻らなくなります。
今回のBパターンでは、
部長に対して日々の努力と苦労を労いながら、「我々とは時代が違うと思って、若手達が自ら仕事をやりたくなるような声かけや仕掛けを、別途考えましょう」
「部長から若手に、『土日や深夜のメールは気が回らず申し訳なかった。極力送らないようにするが、どうしても必要な時は理解してほしい。すぐにメール確認できなかったり、返信できないことがあっても責めるつもりはない』という言葉を伝えてほしい」
「若手向けの人事研修では、『部長クラスのマネジメントは、こんな苦労や努力が陰であり、一方でダイナミズムもあるんだよ』といったことも教えていく」
という話をしました。
正直言って、これで万事解決とはならないでしょうが、社員の心のメンテナンスを継続するつもりです。