現役人事部長の「採用研究室」

人事部長の「採用研究室」

採用面接に社員研修、査定評価まで…人事部という職場で日々思うことを書きます。企業の人事担当者、学校の就職支援課、就活する学生さんの参考になれば幸いです

転職に向いていない能力

私の会社は古い会社で、年功序列の要素がいまだに強いのですが、それでも「年下の上司」が増えてきました。

部長職でも、30代が数人おり、それぞれ50代の部下がいます。

 

30代で部長職になる社員を見ると、

「数字や形ではっきり成果を見せられる」

ようなケースが多いです。

例えば、新たな商品を生み出したり、前年比150%になるような施策を生み出したり。

 

一方、40代で部長職になるような社員は、

「成果は一言では言えないが、部署間をうまく取り持つなど、円滑なコミュニケーションを生み出している」

人が多い気がします。

例えば、制作部門と営業部門が互いに譲らない主張をしたとき、絶妙に間に入って施策を一本化するなど。

決断力と交渉力のバランスがいい人です。

 

両タイプともに、役員まで出世していく過程で人数が絞られていきますが、どちらかというと、後者のタイプの方が、役員になる確率は高いです。

ただし、数字で説明できる成果を出す人は、転職する人も少なからずいますし、他業界でも早い段階で評価されているようです。

なので、人事としては辞めないように評価やコミュニケーションで工夫をしています。

 

後者のタイプ、つまり社内事情と人脈を駆使して最適な判断をする人は、転職には向いていないように感じます。

このタイプの人はそれを自覚しており、転職することはほとんどありません。

が、ときどき「こんなに会社に貢献しているのに認められない」と不満を募らせて、転職してしまうことがあります。

より適した仕事を求めて動くことは賛成です。でも、長い時間をかけて人間関係を形成し、社内の力学や風土を学んだ上で最適解を出してきたのであれば、組織が変わるとリセットされてしまいます。

マネジメントの能力は、組織が変わっても生かせるというのは正しいですが、会社の風土とは驚くほどバラバラです。

はっきり言えば、同じ会社で出世する方が何百倍も楽です。

それを承知の上で、組織を変えてでも実現したいという強い決意がないと、

「前の会社のほうが、自分の特性を生かせたのに」

と後悔するような気がします。

 

じつは先日、そんなことを感じるような転職を決意した先輩社員がいまして。

自分自身を客観的に評価するのはとても難しいです。