現役人事部長の「採用研究室」

人事部長の「採用研究室」

採用面接に社員研修、査定評価まで…人事部という職場で日々思うことを書きます。企業の人事担当者、学校の就職支援課、就活する学生さんの参考になれば幸いです

エントリーシート改善実例(①ガクチカ編)

学生時代に力を入れていたこと(ガクチカ)は、採用面接では定番の質問ですが、あなたはフツーに答えていませんか?

 

よくあるエピソードとして

・部活動でリーダーとして、メンバーをまとめて試合に勝った(入賞した)

・バイトで接客の工夫をして売り上げを2割アップさせた

・ボランティア活動でお年寄りの声に耳を傾けて取り組み、感謝の声をもらえた

・○○のゼミ・研究に取り組み、学ぶことの重要さを知った

あたりでしょうか。

 

《上手いガクチカ・惜しいガクチカ

今回は、過去に選考したエントリーシート(ES)を例に、どうすれば書類選考で落ちないESが書けるか、お話ししたいと思います。

なお、現物はお見せできませんので一部修正しています。
 
運動部の学生のESです。
運動部のエピソードは、勝負事であり陰の努力や上下関係などアピールしやすいのですが、ポイントを外すと惜しい結果になってしまいます。
 
ES例①
体育会バスケットボール部で、部長として部員の技術向上に取り組んだ。私が大学1年で入部した時は、熱心に練習に取り組んでいるとはいえず、3部リーグですら最下位だった。そこで私は率先して練習メニューを作成し、バスケット経験者の入部勧誘も人一倍頑張った。全体練習の後も必ず個人練習を欠かさずおこなってきた。その結果、昨年念願の1部リーグに昇格し、私自身もMVPに選ばれた。高い目標を掲げ、日々努力を怠らないことが何よりも重要であることを学んだ。
努力家で、大きな成果を上げたことも文中から伝わります。悪いわけではありませんが、次のESと比較してみてください。
 
ES例②
体育会バスケットボール部で、チームの力を最大化することに注力した。部で一番経験の浅かった私は、レギュラーになることを目標に、自分がうまくなることだけを考えて練習していた。しかし、いくら人より自主練し、一生懸命に頑張っても認められることはなかった。以来、自分の得点ではなく、いかに仲間の武器を引き出すかという思考に変えるようにした。すると、周囲の評価も変わって認められるようになった。チームで戦うには個人の技量以上に、共に戦う仲間と結束して総合力を最大化できるかが重要であることを学んだ。

どうですか?
例①の努力して昇格した話に対して、例②は自分が活躍したシーンはありません。
人事担当者にとって、どちらの方が評価が高いと思いますか?
私なら例②です。
例①からは、部長として頑張ったとは書いてあるものの、部員とどのようにコミュニケーションを取って成果を得たのかがわかりません。きっと個人的には努力する人なのでしょうが、逆に言えば、会社に入ってから自分の成果ばかり考えて仕事する社員にある心配もあります。
まあ、実際にはESは通過させて、面接で他人とのかかわり方について聞くことになりと思いますが……。
 
一方、例②の学生は、自分本位だった過去を告白しつつ、仲間を引き立てることが大切ということを、実体験で学んだと言っています。
特別な仕事でない限り、入社1年目はチームのサポート役として働くことになるでしょう。その時にESに書いたような経験があれば、職場に早く馴染んでくれるのではないかと想像します。
 
ついでにもう1本。
ES③
私は大学に入り、物事を客観的に見ることの大事さを学び、冷静に客観視するように心がけてきました。所属するサッカー部では、1年生、2年生時代は主観的に考えても問題ありませんでしたが、学年が上がって責任が大きくなっていくにしたがって、さまざまな意見を聞き、それに対して自分の意見を持てるようになりました。現在は100人が所属する部の最上級生として、同学年だけでなく下級生の意見も聞きながら、円滑に活動を続けています。

本人としては常に考えているのでしょう。真面目な人なのだろうと思います。でも、人事担当者には、この人が何を考えてどんな行動を起こしたのか、このESからはわかりません。
リーダーシップをアピールしたいのなら、具体的なエピソードを簡潔に入れること。この重要性を、上記のES例文を読んで感じていただけたのではないでしょうか。