現役人事部長の「採用研究室」

人事部長の「採用研究室」

採用面接に社員研修、査定評価まで…人事部という職場で日々思うことを書きます。企業の人事担当者、学校の就職支援課、就活する学生さんの参考になれば幸いです

ジョブ型雇用、日本でできるのか?

 

同業他社の人事部長から聞いた話ですが、先日、彼の会社のベテラン社員が酔って万引きをしたのだそうです。

(こういう処理も人事が請け負っています)

ところが、メディアに書かれたり、クライアントに知られることを懸念して、その会社は懲戒処分も非公開にしました。

私は「いっそ懲戒解雇にできないの?」と聞いたのですが、

「弁護士に相談したけれど無理って言われた」

とのこと。

日本は、解雇に関してはとても難しく、本人が拒否すれば通勤中の痴漢ですら簡単に解雇できません。

まあ、企業に対して過剰なまでに社員の雇用を守らせることで、国も治安維持やら納税やら、メリットがあるのもわかります。

 

《やる気のない社員は事実上解雇できない》

同様に、いやそれ以上に難しいのが、怠慢社員の解雇です。

昨年、大阪府の職員が勤務中の喫煙が禁止されているにも関わらず、9年間で2318回職場を抜け出して吸っていたとして懲戒処分になっていました。

ここまで細かくカウントして、ようやく懲戒にできるくらい、社員の処分は難しいのです。

解雇となるとハードルはさらに上がり、

・3年以上最低評価が続くこと

・サボったり仕事を拒否した場合は、その都度注意し、その対応を記録する

・ただし、過度に仕事を与えることも、仕事をさせないこともハラスメントに当たるのでNG

といった条件を満たしても、本人が拒否すればよくて示談、と言われます。

 

《人を選ぶジョブ型雇用》

新型コロナをきっかけに、ほとんどの企業で在宅勤務が導入されました。

在宅勤務やリモートワークを推進させるために、欧米式のジョブ型雇用を導入するという大企業のニュースが報じられています。

ジョブ型雇用は、社員が個々に職務、報酬などを明確に定め、契約書を交わします。

たしかに、ジョブ型にすれば自分の仕事は決まっているのだから、どこで仕事しようが、午前中にまとめて処理して午後は好きなことをしようが、責任ははっきりします。

結果が十分なものなら、会社も損はないのでいいんですけどね。

 

でも、日本の法律や風土にはどう考えても馴染まないように感じます。少なくとも今は。

私の会社でも、4、5月は社内の半数以上が在宅勤務をしていましたが、

「家じゃ資料が見られないから、実質自宅謹慎だよ(笑)」

と若手社員の前で、平気で話すおじさん社員がけっこういました。

こういう人に責任ある仕事を任せても、遂行できずにお客さんにも同僚にも迷惑をかけてしまいます。

在宅勤務やジョブ型雇用のブレーキになっていることを、本人は自覚していないんですよね……。

 

やる気のない社員はすべて解雇してしまえ!

などというつもりはありません。

ただ、何度注意しても改善する気のない「ナメた」社員には、適度に緊張させられるくらいの解雇ルールが日本にあれば、ジョブ型雇用も根付くんじゃないでしょうか。