元部下の退職
人事部の前に所属していた部署で、新入社員時から教育係として見てきた部下が、退職しました。
人事の立場で、退職届を受け取ったときは残念な気持ちでしたが、理由を聞いて、いろんな意味で納得。
・今の会社に感謝しているが、安定した環境に慣れてしまいそうなのが怖い
・30代半ばは、もう一度チャレンジできる最後のタイミングに感じたこと
・転職先はベンチャー企業で、給料は下がるが成長を実感できそう
などが理由とのこと。
元部下に限らず、退職を申し出てきた社員には、まずはその理由を聞き、その理由が解決できるものならば、退職を回避する方向に持っていきます。
人事異動や、担当替えなどもすることがあり、これによって退職希望の半分くらいが撤回されます。
《本当の不満を掘る》
元部下のような理由を申し出てきて、かつ転職先まできめているのであれば、もう撤回することはありません。
そうなると人事は、気持ちを切り替えます。
上記のような退職理由は、本当ではあるのでしょうが、大概はもっと奥に辞めようと思ったきっかけがあるはずです。
社員が人事に対して不満を言うことは、それほどありません。
でも、辞めると決めたのなら、うまく導けば上司や会社への不満悪口を聞き出すことができます。
「気持ちよく送り出そう。代わりと言っては何だが、この会社への置き土産と思って、ダメなところを本音で聴かせてほしい」
と切り出します。
最初はなかなか言い出しませんが、私が思っている会社のダメなところも話したりして引き出していくと……
「若手たちが何度も公式サイトを作ろうと言っても、A部長はまったく意見を聞かず無視し続けたのに、専務が思いつきで言ったとたん、あっさり実現して。若手はみんな、A部長の保身感にうんざりしています」
「B部長がプライベートのゴルフに会社経費でハイヤーを使っていること、部員はみんな知っています。でも、役員が見て見ぬフリしていることの方が問題だと思います」
などなど、現場のモチベーションを下げる事実が出てきます。
確かに、これ一つで退職するようなことはないでしょうが、不満が蓄積されていく様子が伝わります。
人事としては、経営陣に伝わらないような情報を、こういう機会に収集しています。